私が守る

私が盾になる

それが、私の役目









「……ご主人様」

「…え?」









…私が置かれていた場所が、デュエルディスクの上でよかった。

そうでなければ、私はこうして…




「…ブラック…マジシャン…?」

「はい、私です…」




…貴方を振り向かせることも、話し掛けることも出来なかったから。





「…話せる、のか?」





あまりにもびっくりした顔をなさるから

私は思わず
笑ってしまった



「…はい」



短く返事をして、目線を合わせるように片膝を立てる。

貴方の顔が、よく見える位置。





「ご主人様に、御礼が言いたかったのです」

「…礼?」

「私をずっとデッキに入れ使って下さっていることを…」




私が描かれているカードはもうだいぶ古くなっていて、色が薄くなっていた。
それでも私を未だデッキに入れ、闘いの場に召喚して下さる。




「ありがとうございます、ご主人様」

「…いや?むしろ…礼をいうのは俺の方だろう?」

「…?何故ですか?」





首を傾げて考えるが、わからない。
先を促すように貴方を見つめれば。






「…あの時お前が…俺を庇ってくれなかったら、…俺の脚は無くなっていた」







…物凄い音で唸るノコギリの円盤に、貴方が切り裂かれるのを見たくなくて。



貴方の命は一つしかないのに。



何故あの時私に『盾になれ』とお命じになられなかったのです?








「…そうおっしゃるなら、何故…命じて下さらなかったのですか?」








あの時、心の中でずっと考えていたことを

今更、聞いてみた。


私は所詮デュエルディスクが無ければただのカードだというのに。








「…お前を犠牲に…したくはなかった」









…私は絶句した。











「…ご主人……様」

「だがお前はお前の意思で、俺を助けてくれた…本当に、ありがとうよ」






私に向かって、笑顔で。


…今度はあんな風にならないように、とデッキを組み直す貴方をみて。











…私はなんて幸福なのだろうと、あらためて、感じた。











「…あと」

「はい」

「…ご主人様は…止めてくれ」









…はがゆい、と。
苦笑する、私のご主人様










「…はい、遊戯様」











…突然名前を呼ばれるのと同時、後ろから私が抱きしめるのに


貴方がうろたえたのが、とても











愛おしくて。








私に実態などない

けれど、貴方と共に
闘えるから











私は、幸福です。




Fin.