不謹慎かもしれないが

俺はとてつもなくそれが

嬉しくて。














かんかん、と暗い炭坑の中固い土にピッケルを振り下ろす、一人の青年。
そして隣で物珍しそうに辺りを見回しているもう一人の青年がふいに話しかけた。


「…やっぱ暗ぇのな、炭坑ってよ」

「そりゃそうですよ?土の中なんですから」



さりげなく話を振ってみれば、ちゃんと反応を返してくれる、赤毛のジムリーダー・ヒョウタ。
こいつは暇さえあれば炭坑に潜り、ジムに人がくると急いで帰って、いつも土だらけで試合をおっぱじめる。
仕事だから、と口で言ってはいるが、実際見てみれば本気で楽しいらしく…
わくわくした顔をしながら土をピッケルでひたすら掘り返していた。



「…楽しいか?」

「楽しいですよー?やってみます?」

「いや…遠慮しとくわ」



短い金髪をかきあげてそういった、碧眼のジムリーダー・デンジ。
暇だ暇だ、とジムを改造して毎日過ごしていたが、
ある日それに電気を使いすぎたらしく街を大停電にさせた張本人でもあった。

その大停電の復旧にあたり、工事現場で疲れながらも仕事をしていたヒョウタをデンジが偶然見つけ…




『…お疲れさん。これ飲んで少し休みな?』




と、そう優しく声をかけてコーヒー缶を手渡したのが、二人の始まりである。



大停電の件で多少いざこざはあったものの、すっかり仲良くなったデンジとヒョウタ。

今回は炭坑に連れて行ってもらい、ヒョウタの働きっぷりをデンジは見させてもらっている。











…しばらくたって、がつ、と何かにピッケルが引っかかった音がした。




「…この感触…間違いない!進化の石だ!」




嬉しそうにヒョウタが土から小さな石を掘り起こす。
それをまじまじとデンジは見入る。


よくよく周りを見れば、ヒョウタの足元に山積みになりそうなくらいちらばっている進化の石。
どれだけの時間を炭坑で費やしているのだろうとデンジは苦笑する。




「ヒョウタ、それって後どうすんだ?」

ぼそと聞くと、ヒョウタははっとして我に返った。




「…あ…つい…楽しくて取り過ぎちゃいました…えへへ」

と苦笑して、いったん石を集めようと手を伸ばした瞬間であった。








がらがら、と

出口が塞がれたのである







「…え…?」

「…マジかよ…」






完全に生き埋めになってしまった二人は唖然とする。

デンジは携帯を開き繋がるか確認したが、電波はなく…。





「…お前ポケモン持ってっか?」

「…持ってない、です」




一瞬沈黙が流れた。






塞がれた出口の土を撫で、ポケットを探るデンジ。

その後ろで、ぷつ、と何かが切れたのか…ヒョウタが嗚咽を漏らし始めた。





「…僕の…せい…」

「…何でだ?」

「…僕…前にもこうなったことがあって……
…そのこと…わすれてて…デンジさんの…こと…まき…こ…」




ぼろぼろと涙を流し、座り込みながらも必死に話すヒョウタを、デンジが口を塞いで遮った。




「…もう何も言うな…お前今まで笑ってたじゃねーかよ?その元気はどこ行ったんだ?ん?」



そういって、デンジはヒョウタのヘルメットを外し頭をわしゃわしゃと撫でてやる。





「…お前のせいじゃねーよ?」






安心させるようににかっと笑い飛ばしてやれば、元気づいたのかヒョウタがくす、と涙目で笑った。






「…はい」






ヒョウタを撫でていた手がぎゅっと両手で握られた。

デンジより少しだけ小さい、温かい手で。










…どうしたもんかね、俺も…






…友達じゃ

止まれそうにねぇわ










「…っぅわ」








…気付けばヒョウタは、デンジの腕の中にいた。

びっくりして体を離そうとするものの、びくともしなくて。

でも何だか安心した。

ぎゅっとデンジの青い上着を握れば、ふとお互いに顔を見合わせた。









「…聞いてくれっか?」

「…何でしょう…?」






首を傾げて問えば


















「…外出られるぜ?」








「……………は?」

「エテボース!そこのどてっぱらに風穴開けてくれ」




…モンスターボールから出てきたエテボースは、尻尾で一撃突き手をかました。






すると、いとも簡単に出口が開けたではないか。






「…デンジさん…僕のこと騙して…」

「いーや?俺はポケモン持ってねぇなんざ一言も言ってねーぜ?」








にっこりと笑顔で立ち上がって後ろを振り返ると、デンジはそう言い放った。









「…何ですぐ出してくれなかったんですか!」



半泣きで必死に訴えるヒョウタにデンジが一言。





「ヒョウタと二人っきりになれっかなって、な」





エテボースを撫でてやり、モンスターボールに戻すと、デンジはヒョウタの目の前にひざまづく。

そして少しむくれているヒョウタの顎に、すと手を掛けた。





「…何する気ですか」

「…俺な…お前のこと…好きになっちまったんだ。許せ」





メガネを外されてぼやけた視界に、デンジの顔がはっきり見えて








…唇が、重なった。



Fin.