「お帰りなさいませ。KKさん。それにジャックさん」

・・・いつの間にか、2人の肉体に魂は戻っていた。

「・・・・・俺・・・生き返っ・・・」

ジャックが片腕で自分の体を触る。

「そうですよ。KKさんが連れ戻しに行ったんです」

黒服の紳士は笑顔で答える。
・・・ジャックはまだ腕が取れていた。
上手く起き上がれないのを見、KKが肩を貸して起こす。

「・・・にしても・・・本当に助けてもらっちまったな。ジズさんよ。感謝するぜ」

KKが歯を見せて笑う。
それに対しジズも笑顔を崩さず返した。

「いえ、いいのです。ワタシに出来る事をやっただけですので」
「・・・あり、が、とう」

ジャックが唐突に言って頭を下げた。
絶対にこの一言は言っておきたかったのだ。
少しだけ、カタコトだけれども。

「そんな・・・顔を上げてください。貴方方が帰ってきて下さっただけで嬉しいのですから」

ふふ・・・と含み笑いをすると、ジズはふわっと宙に浮いた。

「・・・では、そろそろ失礼いたします。・・・お元気で」
「おう・・・ありがとうな。・・・あ、これ持ってけ!礼だ」

そういうと、ひょいとジズに小さなコーヒーの缶を投げた。
それを受け取ると、

「・・・ありがとうございます。大切にいただきますね」

と言って、フッと消えた。

・・・とても、不思議な紳士だった。
でも、「ありがとう」と何回言っても足りないぐらい、感謝の気持ちでいっぱいだった。
ジャックは今の光景を見て驚きながらいう。

「・・・幽・・・霊、だったのか?あの人」

ジャックの右腕をもち、KKはうなづきながら答える。

「その通りだ。お前の恩人だぜ?
おめぇが魂だけ飛ばしちまってたからよ、連れ戻してまた魂を入れてもらったんだ」

ふと、真剣な顔つきになり、続けてジャックに言った。

「まぁよ・・・。ほとんど無理矢理連れ帰ってきちまったが・・・
最終的にゃお前の方からオレんとこに来たってこたぁ、まだ死なねェって意味で取っちまってもいいんだよな?」

急にイジワルそうな笑顔になり問い詰められ、ジャックは目線をはずしながらこくんとうなづいた。

「・・・他のパートナーなんて、お前について欲しくない」

そういってKKの肩から腕を放し、くるっと後ろを向いて小走りでその場を去るジャック。
そんな姿がKKの目には愛しく見えた。
長い脚でその後を追う。

「待てって!」
「いやだ・・・ッうわっ」

ジャックはぎゅうと後ろから片手で抱きしめられてしまう。
・・・しかし諦めたのか、抵抗はしなかった。

「〜〜〜・・・」

真っ赤になりながらも背をKKの胸に預けてくる。
その様子がおかしくてつい、くくっと笑ってしまったKK。

「っ・・・何がおかしい」
「いや?かわいいなぁと思ってよ」
「・・・馬鹿が」
「お前ほどじゃねェけどな」
「・・・・・」

黙りこくってしまったジャックをいったん離し、正面に立つ。
そしてジャックにちぎってしまった腕を渡すと、KKはあごを持ち上げて唇を塞いだ。

「・・・んぅッ」

ジャックは初めての事で驚く。
掃除屋なんてやっていれば、色恋沙汰など無縁なのだから当然である。

目を見開いてキスを受けていたジャックは、舌が絡んでいくうちに徐々に目を閉じていった。
・・・人間に限りなく近く、ジャックは作られた。
なので感点などもしっかりとあって。

・・・気持ちよかった。

離れそうになる唇を、ジャックは無意識にねだっていた。
水気のある音をしきりにたてて。

「・・・ふ」

潤んだ瞳を開いたら、唇を離したKKの顔が月光に照らされているのが見えた。
ジャックは初めて与えられた快感にぼーっとする。

「・・・悪ィ・・・やりすぎたな」

KKは頭をかき、苦笑しながらジャックのちぎれた右腕をまた預かり肩に担ぐ。

「帰ってから・・・だな。腕くっつけんのは。開いてねンだわ、ここよ」

そう一言かけると、ジャックにすっと手を差し出す。

「歩けっか?今のでやばかったらおぶってくぞ?」

はっと急に我に返ったジャックはその言葉に、

「い・・・いいっ、一人で歩くッ・・・てか先行ってる!!」

とバシュンッと音をたて、ジェット全開で飛び去ってしまった。
またまた取り残されたKKは、それを見送りながらぼやく。

「・・・そんなにヤバかったのか・・・可愛いヤツ」

くすくすと笑いながら、KKは夜道を歩いていった。






「・・・ッ」

KKの家のドアの前で、真っ赤になるジャック。
ずるずるとそのままへたり込む。

・・・まだうっすら残っている、唇の感触。
人間特有の熱さに、柔らかさ。

「・・・って何考えてんだ俺・・・ッ」

ふるふると首をふって思考を止めようとする。
・・・しかし、次の瞬間にはもうそんな心配は要らなくなっていた。




「・・・また、しくじったな。出来損ないの戦闘兵器が」
「・・・ッ!!」

フッとジャックの瞳が鋭くなる。

「お前らか・・・」

いつの間にか目の前に立っていたのは、あの図体のデカい破壊屋であった。

「何のために、オマエをKKと組ませたか知っての事か?」
「・・・何が言いたい」

意味深な言葉を吐く破壊屋にイライラしながら、左手でガスマスクを付ける。
右腕が無いため、いつものように相手を切り裂く事は不可能である。
しかし無防備でいるわけにもいかないだろう・・・が、ジャックにはなぜか余裕が見えた。
・・・破壊屋はそれには気付かずくくっと低く笑う。

「頭だけでも潰されないように・・・か?」
「・・・さぁな」
「そう強がるな・・・すぐに消してやる。安心しろ。・・・じゃぁな!!」

がばっと大きく振りかざされた電撃の拳。





「もうその手は効かない」

ジャックは言うなり、その拳をジャンプしてかわす。
そして大柄の破壊屋の腕に、電気に当たらない程度の場所にとん、と降り立つ。
直後吐き出された、青い炎。

それは破壊屋の顔面に直撃し、やがて全身を包んでゆく。

「あ゛・・・ッあ゛ぁ、ぁああ゛あ゛あ゛!!」
「俺の邪魔をする奴らは容赦しない」

ガスマスクを外しながら言い放った。

ばたっと、熱さで倒れた破壊屋の背中。
機械の体であった。
炎で回路が焼き切れたのだろう。
ぴくりとも動かなかった。

「腕無くなってる時狙ってきやがって・・・」

そうつぶやいて、目の前にある焼け焦げた死体を蹴飛ばす。




『何のために、オマエをKKと組ませたか知っての事か?』




・・・さっき、この破壊屋が言っていた言葉がふと頭をよぎった。

―――・・・何のために?




『スナイパーMr.KKを一刻も早く排除しろ』




「・・・ッ!!」


・・・まさか最初から・・・主はKKを殺すためだけに・・・!?


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