ボクはここにいるよ。

キミの目の前にいるよ。
手だって届くところにいるよ。


・・・でも、キミは気付いてくれないんだね。






ねぇ。
何を書いてたの?

新しい歌の歌詞?

・・・よくやるよねェ、家事全部こなした後にさ。
こんな夜遅くまでずーっと書いてたんだ?

疲れてるなら素直に寝ればいいのに。
どうしてそんなに無理ばっかりするのさ。


・・・でもね。
ボクはキミのそんなところが好き。

がんばり屋のキミが好き。



ちょっとだけ、今まで書いてたの見せてよ。
・・・って、眠ってるから聞こえないだろうけどさ。





・・・ふぅん。
これは・・・誰かに向けての歌なのかな?


・・・『誰』に向けての、歌なのかな?





やっぱり・・・あの人、だよね。
白い肌した、赤い目の吸血鬼さん。
いかにも、って感じ。内容が。


『大好きだから そばに居て』


うわぁ、キミそんな事まで歌詞にしちゃうんだ?



・・・そっかぁ。
望む相手が目の前にいなくて、残念だったね。




・・・ゴメンね?
ボクじゃ、ないんだよね?

キミが、『そばに居て』欲しい人は。
キミが、『大好き』な人は。




・・・そうだよねェ。
ボクがそばに居ても・・・透明だから分かんないもんね。

ボクがいくらキミを好きでも・・・キミは他に好きな人がいるんだもんね。





「・・・好きになって、ゴメンね・・・」





ボクみたいに透明な涙。
キミの書いた歌詞に落ちて、滲んだ。

ボクも同じように、滲んで。
もともと誰もいなかったかのように、消えた。


でも。
この痛くて苦しい想いは・・・滲んじゃくれなくて。
消えてくれなくて。




「    」




・・・ボクは、そばに居るよ。
名前だって呼べば・・・すぐに届くところにいるよ。

なのにどうして。

こんなに遠く感じるの?



寂しくなるばっかり。
涙もとまっちゃくれない。

立ってられなくなって、キミの隣にうずくまった。



・・・痛いよ・・・。
・・・苦しいよ・・・。

・・・『好き』っていうのは・・・こんなにも、辛いものなの?





ねぇ。

明日の朝、ボクに教えて。



ボクはここに、ずっと居るから。

教えてくれたらきっと。
・・・きっと、こんな辛さ・・・なくなるから。




早くボクが、この滲んだ世界にいることに。

気付いて。

・・・助けて。

fin.