以前オレは、常時狙われていた掃除屋で。
今も続けてはいるのだが、このときはまだ一人。
しかも、ジャックの組織とはライバルだった。
腕の立つスナイパーと呼ばれる程、オレは何人もの悪業者を殺してきた。
それは向こうも同じで、かなりの凄腕がいたらしい。
だが、オレはそいつの名前すら知らなかった。
そう、まさかそいつが、機械だったって事も。
・・・ある日のことだ。
突然、向こうの組織に呼ばれたのは。
仲が悪かったはずなのに、どうしてだろうか。
いろいろ考えたが分からなかった。
・・・まぁ殺されるのならその前に返り討ちにしてやるし、問題は無いだろうとオレは踏んだ。
そしてそこに行ってみると、ご丁寧にも案内役がいて。
ドアを開ければ少し奥のほうに、凄腕の殺し屋が後ろ向きで立っていた。
「・・・俺と組むのはお前か?」
振り向いてそう問われる。
殺し屋にしては、傷がなさすぎだと思った。
綺麗な髪に、不思議な存在感。
「お前とオレが組む?」
かつかつと歩み寄る。
「お前の名は何だ」
話を聞かずに返されたので、
「・・・KKとでも言っておこうか」
と、スナイパー時の名前を口にする。
するとそいつはオレをぐっと見上げ、こういった。
「俺はジャック。これから組んで戦うことになる」
そういいながらも、そのジャックという青年はオレをずっと睨んでいた。
すっと、小さなバッヂを渡される。
「持っていろ。これで主との連絡をとるんだ。分かったなKK」
・・・いきなり呼び捨てか。
「へーへー。分かった・・・。だがよ、オレはまだ一人でスナイパーをやらせてもらう。オレに指図はするな」
そう吐き捨て、オレは外に出ていった。
―――・・・何だ、アイツは。
性格が歪み過ぎてる。
・・・まぁ・・・やってる事がコトだからな・・・しかたねぇんだろうが。
普通の人間ならそうだろうさ。
人を殺すなんて、安易な気持ちじゃできねぇからよ。
あいつも、きっとその中の犠牲者なんだろう・・・。
全然噛みあわなそうな奴だった。
正直、こんな奴と組んで仕事がはかどるわけがねェと思ってた。
だがこの後、状況が一変する。
「・・・ッあ゛ぁあ゛ああ・・・ッ!!」
オレがたった今出て来た所から、突然叫び声があがった。
さっき聞いた、あのジャックとかいう青年の声。
オレはなぜかとてつもなく心配になり、中へもう一度入っていった。
・・・すると、ジャックはなんと腹を開かれ、中に管が繋がれていたのだ。
「あ゛ァ゛あぁあ゛!!」
バチバチッと火花が飛び散るたび、ジャックは悲鳴をあげる。
「改造完了まであと46%」
周りにいた作業員がチェックを入れている。
「続けろ」
「やめやがれ!!」
オレはそう叫び、止めに入った。
いても立ってもいられなかった。
そんなに苦しそうに、喘がれていたら。
「・・・ッ何を」
「うるせェ!!苦しがってんのが分かんねェのか!?」
繋がれていた管をブチブチと引き抜き、ジャックを腕に抱え込む。
「・・・そいつはただの戦闘兵器だぞ?」
作業員がいぶかしげにオレにそういう。
「戦闘兵器だか何だか知らねェけどよ・・・お前らの今の扱いは許せねェ」
すると、奥から一人の白衣を身にまとった男が出てきた。
「何の騒ぎだ」
「あ・・・主様、こいつが邪魔を・・・!」
ジャックのいう主とやらはこいつか。
そいつはオレをじろりと見ると、ふと皮肉な笑みを見せた。
「あらかた自分のパートナーを守ろうとしたんだろう?」
挑発的なその笑み。
オレはそれには答えず、腹立ち紛れにジャックから受け取ったバッヂを主の足元に勢いよく投げつける。
「こんなものいらねぇよ。あんたの命令なんて聞く気も無いからな」
つりあがった目を細め、噛み付くようにオレは睨んだ。
するとさっきの挑発的な態度はどこへ行ったのか、主はおどけてこういった。
「おいおい・・・そんなに敵対心を持つなよ。そいつを苦しめたくないんだろう?
それならそれで構わん。連れて行け。・・・あとの始末は任せよう、Mr.KK」
最後に名前を呼ばれてぞっとした。
主の言動すべてにすさまじい嫌悪感といらだちを感じながら、自分の胸元でぐったりとしているジャックを肩に担ぐ。
「・・・言われなくても連れて行く。じゃぁな、主さんよ」
皮肉な物言いで言葉を返し、オレは早々に外に出て行った。
・・・苛立ちが消えてきたころ、ふと思い返す。
まさかこいつが、戦闘兵器・・・機械だったなんて、と。
それにしては肌が金属っぽくない。
人工の皮膚で覆っているのか。
・・・しかし、重さはさすがに機械なだけあって重く、ずっしりと肩に食い込む。
落ちてくるジャックを担ぎなおしながら、オレは家へ向かった。
「・・・大丈夫かい、戦闘兵器さんよォ」
重いジャックを担いだままかなり歩き、ようやく家にたどり着くとベッドに寝かせた。
ベッドがぎしっ、ときしむ。
「・・・生きてっか?」
ひらひらとジャックの目の前に手のひらをかざす。
「・・・あぁ」
不機嫌に返事をするなり、ぷいと背を向けてしまった。
「そりゃ何よりで」
そんな余裕があるなら平気か、とKKは苦笑する。
「・・・じゃ、まだ仕事が残ってるんでな。お前はここで少し寝てやがれ」
冗談交じりに皮肉って、再びKKは外に出て行こうとした。
すると。
「・・・・・重かっただろ、俺」
唐突にそんなことを言われた。
「まぁな・・・機械なんだから仕方ねェだろ」
そう返すと、ジャックはそのまま押し黙ってしまった。
何も話題がなくなったので、ドアノブに掛けていた手を動かし家を出た。
ふとKKは思う。
・・・さっきの言葉は・・・あれはあいつなりの、オレへの気遣いだったのか?と。
どっちにしろ、あとで話くらい出来るだろう。
今は安静にさせとくべきだ。
っつっても逃げ出されてたんじゃ元も子もねェが。
まぁあの体じゃ無理か・・・。
そんなことをぐるぐると考えながら、やりかけの掃除を再開した。
・・・ジャックはKKが出て行ったあと、壁を見つめながら不思議に思っていた。
―――・・・どうしてあいつは・・・俺を助けたんだろうか・・・?
あのまま帰ればよかったものを。
わざわざ俺を助けにきて。
主にまで歯向かって。・・・もしかしたらそのまま殺されてたかもしれないのに。
あいつは・・・KKという奴は・・・変わってる。
でも同時に、少しだけ憧れた。
主に歯向かうことなんて自分は出来なかった。
だから少しだけ、そう思う。
「ありがとう」と、柄にも無く言いたかった。
あの苦しみの地獄から救ってくれて、ありがとうと。
上手くは、伝えられないだろうが。
・・・少しお前と、話がしたい。
自分勝手な考えなのは承知の上だ。
分かってるけど・・・でも・・・。
そうこう考えているうち、ジャックは深く眠ってしまっていた。
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