「・・・98・・・99・・・はい、終わりよ〜w」
「ふぅ・・・」
「ホンットお疲れ様ねぇ・・・いつもいつも欠かさずやってるもの」
「おう、体がなまっちまうといけねぇからな」
「・・・ま、この頃はセンセのおかげでそんな事もなくなりつつあるけど?」
「まぁな。しかも戦うたびに確実に力がつくのさ」
「それってありがたいんだか厄介なんだかわかんないわねぇ」
「っはは、そうだな」
かいた汗をタオルで拭きながら、上半身裸のカイルが笑った。
・・・ここは、海賊カイル一家の船の看板である。
そこに二人の影があった。
カイルとスカーレルである。
どうやら、船長はここで鍛錬をしていたらしい。
「・・・・・大きいわよねぇ・・・手」
・・・そばに居たスカーレルが、ふとカイルの左手をとる。
「何だ?いきなり」
「アタシもこんなに大きかったらよかったのに」
そんな事を言いながら、自分の手とカイルの手を交互に見つめる。
「・・・そうか?」
「そうよぉ。・・・ほら、アタシこんな小さいのよ?」
スカーレルは右手を出し、カイルの左手と合わせた。
たしかに関節一個分スカーレルのほうが小さい。
彼らの手は対照的だった。
大きな手に太い指。
小さな手に細い指。
しかしどちらも綺麗な、長い指だった。
「ずいぶん可愛い手してんだなお前」
カイルは歯を見せて笑い、ぎゅっとそのまま指を交互に絡める。
「ずいぶん大人びた手してるのね貴方」
オウム返しのようににっこりと笑って言葉を返す。
そして絡んだ指を口元に寄せ、目をつぶりちゅっと音をたててキスをした。
「大好きよ?」
中指に、唇の感触。
カイルはぐいとつかんでいた手を引っ張る。
「ッあ」
「俺も好きだぞ?」
自分の裸の胸にうずまったスカーレルの目元に、お返しと言わんばかりにキスをする。
そしてそのまま下へと滑らせ、薄くて柔らかいピンクの唇に軽く口付けた。
「・・・大好きだ」
そう言った直後、今度は深い角度で塞いだ。
「・・・ッふ・・・ぅん」
鼻に掛かった甘ったるい声が、カイルの耳を侵す。
水気を含んだ音が響く。
・・・温かい口内で、両者の舌が絡む。
まるで今繋いでいる手のように。
絡んだ指にぎゅっと力が入る。
それに応えるように、スカーレルもまた握り返す。
ゆっくりと唇を離し、カイルはにっと笑って言った。
「そのままのお前でいてくれや」
するとスカーレルは苦笑して、つながっていた手を離しカイルの首に腕を回す。
「このままのアタシで?」
「おう。小さいまんまでよ」
そう返事をすると、カイルはスカーレルを姫抱きしてあぐらの上に横に座らせた。
「・・・もう少しお前がデカかったら、こんな事できねェからな」
「あら、それって手の話じゃなかったかしら?」
「っはは、そうだっけか?」
子供のような屈託のない笑顔。
「・・・まだまだ子供ねぇカイルってば。都合いいように話変えちゃって」
「わりぃ」
―――そんな顔されたら、なんだって許しちゃうわよ。
スカーレルは笑いながら腕を解き、体を完全にカイルに預ける。
「ねぇ、カイル?」
「なんだ?」
「手、貸して」
「おう」
すっと出された大きな手を、スカーレルは小さな手で掴み頬に当てた。
・・・温かい事を確認するように、しばらくそのまま触れていた。
「・・・スカーレル?」
「・・・・・なぁに?」
とろんとした声。
「眠いのか?」
「眠いわねぇ・・・」
・・・突然ふっと重くなった胸元。
スカーレルは眠ってしまったようだった。
しかし、その顔には微笑みが浮かんでいた。
カイルはそばにあった自分の上着をかけてやり、自分もシャツを羽織る。
そして、スカーレルの額にちゅっとキスをした。
「・・・おやすみ」
眠りながらも掴んで離さない小さな手を、握り返す。
大きな手でぎゅっと、包み込むように。
fin.