(・・・こんなもんで、いいのか・・・?)

手には小さな箱がひとつ。

・・・今日は、特別な日。





人気のない路地を、青年はたった一人で歩いていた。
明るいグレーの髪の毛に、そんなに大きくはない体つき。
運動部に入っているというのに、肩幅も狭い。
緑色の大きい瞳。
褐色の焼けた肌。
この青年は、そんな容貌をしていた。

「まだ・・・終わんねぇよなぁ・・・」

一言ぼやく。
青年はある飲食店のバイトをしている、金髪の青年に用があった。

・・・しばらくその店の外で中をぼんやりと見ていると。
金髪の青年が、中からふとこっちを見た。
目が合ってしまった。
あわててそらしたが、遅かったらしい。

「・・・エイト先輩!どうしたんすかそんなトコで!!」

店を飛び出してきた金髪の青年。
飛び跳ねるような声で、外にいたエイトの名を呼んだ。
見上げてエイトが問う。

「え、・・・っと・・・まだ、終わんないのか?バイト・・・」

なぜか顔をほのかに赤らめながら、そう聞いた。
金髪の青年は笑顔で答える。

「うーん、あと10分ぐらいで終わるから・・・待っててくれます?」

NOなんて言えるはずがなかった。
もちろんとばかりに、にっこり笑ってこくこくとうなずく。

「じゃ、ちょっと待っててくださいね!!」
「おぅ、分かった」

そう言うなり、青年はまた店内へと入っていった。
それを見送るとエイトは、さっき手にしていた小箱をポケットから取り出す。

(・・・ほんとに、こんなので・・・喜んでくれっかなぁ・・・)

しばらくそれを見つめたまま、ふとそんなことを考えていた。






「・・・はー・・・お待たせしたっす、エイト先輩」
「お疲れ、リュータ」

バイトが終わったらしく、店からダッシュで出てきたリュータにそう告げる。
それを聞いて軽く笑いながら歩き出すのと同時に、エイトが持っていた小箱を見つけた。

「・・・?ねぇ先輩。その箱何すか?誰かにあげるとか?」
「・・・ッえ!?」

ずばり当てられてびっくりしたエイトに、リュータは確信を持つ。

「・・・あ、当たりすか?じゃぁ誰にプレゼントを?」

無邪気な笑い顔でそう問われて、一瞬何といえばいいか迷う。
なにも企んでいない、そんな笑顔。
嘘など、誰がつけようか。

「・・・ん」
「・・・・・?え?」

エイトはその場で立ち止まり、すっと片手で小箱を差し出した。

「・・・今日、お前・・・誕生日だろ?」
「・・・・・あ、そうだった」

リュータはそんなことも忘れていたらしく、少しあきれながらエイトは言った。

「自分の誕生日くらい覚えてろよなぁ・・・」
「へへ・・・この頃忙しすぎて・・・。・・・んで、コレ・・・もしかして俺に・・・ですか?」
「・・・お前以外に居ないだろ?」
「・・・・・ッ」

がばっと、いきなり前から抱きしめられた。

「ッ!!」
「ありがとうせんぱぁい!!」

大きな体がエイトを包み込み、びっくりして耳まで赤くしながら、ちょっとだけ抵抗した。

「うぉ、ちょ・・・くるしいっつの・・・」
「・・・っと、ゴメンなさいす・・・あんまり嬉しくてつい・・・。・・・あ、これ開けますね!」

エイトから腕をはなすと、にこにこしながらもらった小箱を丁寧に、しかし手際よく開けた。
・・・中に入っていたのは、鎖がついたペンダントだった。
天使の羽のついた、十字の剣。

「・・・こんなもんしかあげらんないけど・・・」
「ッ何言ってるんすか!!すっげーうれしいっすよ!」

本当に嬉しそうな笑顔で、もうすでにペンダントを首にかけていたリュータ。
エイトもつられて嬉しそうに笑った。

「そっか。そりゃよかった。・・・じゃ、用はこれだけだからさ・・・」
「・・・ッ先輩!」

リュータが突然大声で、帰ろうとしたエイトを呼んだ。
びくっとして振り返るエイト。

「・・・んな、何だよ?」
「・・・もう少しだけ・・・・・俺と、居てくれないですか」

初めて見る顔だった。
すごく真剣に、エイトを引きとめようとしていた。
その発言でびっくりしたエイトは、片方の瞳から涙を一筋流した。

「・・・え、あ、ぁのせんぱ」
「オレでいいの?」
「・・・へ?」
「そばに居て・・・いいのかよ?」

だんだんと涙声になっていくエイトを、耐え切れずにぎゅっと抱きしめた。

「どうしてそんなこというんですか!」
「・・・どう・・・して・・・って」
「いいに決まってます!ずっと俺と居てくださいよ!大好きなんですから!!」

―――・・・大好き?
リュータが?
オレの、こと・・・を?

「・・・ぅ、・・・ぐすっ」

暖かいリュータの腕の中で、思わず泣きじゃくってしまうエイト。
リュータはこらえ切れないほど愛おしく思った。
頭一個分差がある愛しい人を、さらにまたぎゅっと強く抱きしめる。

「・・・泣いていいっすよ。我慢しないで」
「ふぇ・・・ひぐッ・・・っく」
「・・・大好きっすよ・・・エイト先輩」

そういうと、リュータは建物の壁にエイトをもたれ掛けさせた。
覆いかぶさるようにして、エイトの両サイドの壁に手をつく。

「・・・ッあ」
「・・・可愛い」

エイトの首筋に指を這わす。
滑らせるたびにビクビクと反応する、感度のいい肌。
リュータの腕を掴んで引き剥がそうとするも、抵抗むなしく抑えつけられてしまった。
・・・両腕が使えない。

「・・・リュ、・・・タ?」
「先輩・・・。・・・声・・・出して」
「ッぇ、・・・っひ!」

まだ涙目のエイトを、さらに追い詰めてゆく。
リュータの舌が、耳の後ろを攻める。

「・・・ぃ、やだぁ・・・ッ」
「・・・もっと・・・叫んで」
「っや」
「・・・抑えないで・・・声・・・聞かせて、先輩」
「・・・っあぁッ!」

耳を舐められいたぶられ、ついでに囁かれたりもして、体から力が抜けていった。
リュータは両手を開放し、エイトの着ていた服を脱がしにかかる。
エイトは膝ががくがくして自力では立っていられなくなり、
ついにはリュータにしがみついたままの状態になってしまった。

「・・・リュー・・・タ・・・ぁ」

妙に甘ったるい声しか出てこない。
恥ずかしくて仕方がなかった。
名前を呼ぶと、辛いと分かったのかリュータはエイトを座らせた。
内股の体育座り。半分肩が見えている。
・・・相当、来るものがあった。




―――・・・もう、我慢できない。






「・・・んっ・・・やぁ・・・あぁッ」
「先輩・・・気持ちいいすか・・・?」

リュータはエイトのものを握り、くちゅくちゅと音をたてながらしごいていた。
エイトは前がはだけ、腕だけ通した状態で、下は少し引きおろされていた。
リュータの広い背中に腕を回す。
・・・気持ちよすぎて。
言葉すらまともに話せなくなっていた。

「・・・ん、ぁっ・・・はっ・・・ぁあッ!!」

先端からミルクを勢いよく放つ。
そのおかげで、リュータの手はべとべとになった。

「・・・っん・・・ぅん」
「・・・舐めて・・・先輩が出したんだから」

長い指を、エイトの小さな口に突っ込む。
何の抵抗もせず、れろれろと舌を使って自分自身の吐き出したものを舐める。

「・・・可愛すぎっすよ、先輩・・・」

リュータがそういって指を引き抜くと、エイトが何かモノ言いたげに、惚けた顔で上目遣いに見上げた。
その姿があまりにも可愛すぎて、思わず鳥肌が立った。

「・・・何、すか?」




「・・・オレ・・・変だ・・・」
「・・・え?」
「・・・リュータ・・・何かオレ、ヤバイ・・・ッ」
「ど、どうし」



「っリュータぁ・・・ッ・・・」
「・・・ッ!」

エイトから、不意打ちのディープキス。
リュータは焦った。
今までに、こんなに取り乱したエイトを見たことがなかったから。

「・・・んっ・・・ふぅッ・・ぅ」

エイトはぼろぼろ涙を流していた。
自分でもなにをしているのか判断がつかないらしい。
ただただ、唇をむさぼるだけ。

「・・・っは・・・ん」

リュータもそれに応じる。
角度を変えて、何度も舌を吸う。
唾液が溢れるほど。
何もかも忘れるほど。
何度も。



「・・・・・っふ」

ゆっくりと唇をエイトから離した。
溢れた唾液が、あごに伝いながら光る。

「・・・エイト、先輩」

「リュータ・・・もっと触って」
「―ッ!?」
「もっと・・・気持ちよくして」

息を乱しながら、頬を真っ赤に紅潮させながら、エイトはリュータに抱きついた。

「もっと・・・もっと・・・ッ」

困惑しながらもリュータは、今頃異変に気づく。


・・・熱いのだ。
エイトの体が。不自然に。
顔も赤いまま。
・・・リュータは少し青ざめた。

「・・・先輩・・・熱っすよ、これ」

おでこに手を当てながらいうと、エイトはふっと目をつぶって、
そのままリュータの胸に倒れこんでしまったのだった。






「・・・・・ん」



―――・・・リュータ?

オレ・・・どうしちまったんだ?



・・・ぱちっと、目を開く。
そこはどこかで見たことのある場所だった。
今まで自分が寝ていたベッドに、少し散らかった部屋。
今着ている服も、どこかで・・・。
・・・もしかしてここは・・・・・リュータの、家?

「先輩ー・・・って、起きましたか」

ドアをそっと開けて、声をかけたリュータ。

「おぅ・・・。・・・なぁ、オレ・・・何でリュータの部屋に・・・?」

そう聞くと、リュータは耳まで赤くさせて、首を思い切り横に振った。

「・・・ぃ、いや、あの、・・・せ、先輩が熱出してて・・・ッ!!
・・・どうしたらいいか分かんなかったからっ・・・俺ん家に・・・連れて帰ってきたんです!」
「・・・え・・・オレ・・・熱あったのか!?」
「・・・は、はい!」

ここで、エイトが自分に『気持ちよくして』と言ってきたことを、まさか話せるわけがなかろう。
ましてや自分が強制的に襲ってしまった後となると、言いにくくて仕方がなかった。
でも、かなり罪悪感がある。

「・・・そっか。・・・何か悪かったなぁ・・・ありがとうな、リュータ」

にっこりと、エイトが屈託のない微笑みを見せた。
・・・熱があったときの事を、本当に何も覚えていないらしい。

冷や汗をかきながら考えた。

(・・・ッうわぁぁぁぁぁ!!!・・・ど、どうすんだ俺!!このまま話さずに済ませるのか俺!!そんなに俺は意気地なしだったのか!?馬鹿!!話すんだ俺!!・・・あぁでも先輩に話したら・・・ってそんなこと言ってる場合か俺ーーー!!)

「・・・あ、あの・・・リュー」
「ごめんなさい先輩ぃぃ!!」

・・・思わず土下座。(←暴走中)

「・・・え?な、何?リュータ?」

エイトはかなり動揺した。

「俺、・・・俺先輩のこと無理やりイかせてしかも様子おかしいのかなり後になって気づいてその上先輩のこと泣かせて錯乱させてすみませんでしたぁぁぁぁぁ!!!」(←一息)
「・・・・・あ・・・の・・・」

・・・困、った。
とりあえずエイトは、リュータを落ち着かせようとベッドから降りて、詳しく聞こうと話しかけた。

「あの・・・さ、リュータ。もっかい最初っから・・・整理して話してくれるかな?」
「・・・はい・・・。・・・っていうかちゃんと寝てなきゃだめっすよ!!」
「大丈夫だよ」
「だめですよ!!ほら、先輩!またあんな風になられたら困りますから!!」
「・・・あんな風に?」
「―――っ!!」

ぽろっとこぼれたひとつの言葉。

「・・・さっきもオレが錯乱・・・とか言ってたけど・・・何?オレ・・・なんかしたのか!?」

・・・・・えぇしましたとも。




鼻血を吹きたかったほどに・・・ッッッ!!(号泣)




「・・・先輩。・・・言っても怒らねぇって約束してくれたら、答えます」
「・・・おぅ・・・別に怒るつもりないから、言ってみぃ?」

白い歯を見せて笑った。
・・・やはり、言うしかないのか・・・・・・・。
あぁ・・・言いにくい・・・言いたくない・・・!!




「・・・・・・。・・・俺のこと、誘いました」
「っへ!?」

・・・・・言ってしまった・・・。

「・・・ッ俺に!!『もっと触って』って!!『気持ちよくして』って!!
涙目で俺に抱きつきながら言ったんすよ先輩!!
どうしようかと思いましたよ!!」
「・・・そんな事・・・言ったのか?オレ・・・お前に」
「・・・はい・・・その口ではっきりと」

・・・っかぁぁぁぁぁぁ。

「・・・ごめんなさい」
「・・・こちらこそ」

・・・両者ふかぁぁぁぁく土下座。(死)

同じタイミングで顔を上げると、リュータとエイトはなんとなくおかしくなって笑った。

「自分の誕生日に先輩に土下座するなんて思わなかったなぁ・・・っはは」
「いやでもさ、・・・お互い様・・・おあいこじゃん?
・・・ってかむしろオレが悪いんだよ・・・こんなやつに誘われたって・・・なぁ?」

困るだけだろ?と苦笑いをこぼしながら、エイトは言う。
しかし、リュータはその話には少し真剣に答えた。

「いーや。先輩の誘いなら・・・喜んで受けますよ?
さっきのは急にだったから慌てましたけど」
「・・・な」
「あれ、さっき俺先輩に言いましたよね?
・・・『大好きだ』・・・って」
「・・・ぅ、ぁ、えと、・・・・・うん」

うろたえながらも、赤くなりながら素直にうなずくエイト。
その姿を見て居てもたってもいられなくなり、エイトをあぐらをかいた膝の上に座らせた。
エイトが動けないように、後ろから抱きついてやる。

「・・・俺、さっきの誘い乗りましたから」
「・・・え、・・・それってもう終わったことじゃねぇの?」
「・・・いーえ?俺はやるつもりでしたけど」

にーっこりと、悪ガキの笑みを浮かべて、リュータがいつも着ていたパジャマを、エイトの体から剥がす。

「・・・う、ぁ」
「熱ももうないみたいなんで・・・早速・・・いきますよ?」
「ってえぇ!?ちょ・・・待て・・・っぁあッ」
「誕生日なんだからいいじゃないすか。今日ぐらいサービスサービスッ♪」
「こ、こら!リュー・・・ッゃんっ」
「・・・先輩。だぁい好きですよ」
「あっ・・・馬鹿そこさわんな・・・ッ」
「いやです。もっと、・・・感じてください」
「・・・っやぁ・・・ッ」

くすくすと意地悪に笑うリュータの胸元には、エイトからの大事なプレゼントが光っていた。





―――・・・先輩。

俺、このプレゼントもらって、すっげぇ嬉しかったっす。

でも・・・でもね先輩?

ホントに欲しかったのは。

・・・このプレゼントをくれた、先輩だったんすよ?

fin.