足リナイモノいこーる






















古の書物たちは多くを物語ってくれるけど、僕の心には何かが足りない…。























 僕は本が大好きです。
 僕の友達が『お前って、本の恋人だな。つか、本が恋人だろ?』と笑っていうぐらい、僕は本が大好きです。



 だって、本は僕にいろんなことを教えてくれるじゃないですか。
 哲学は世界・人生などの根本原理を追求する学問のことが書かれていますし。
 物語はありえもしないことだけど、不思議と想像できてしまう世界がありますし。
 誰かが書いた自伝もその人のことを詳しく知ることができるじゃないですか。


 つまりは、本一冊を読むだけで、僕はたくさんの知識が手に入るということです。
 すごく、いいって感じるものだと思うんです。




 だけど、本を読めば読むほど、僕の気持ちはなんだか微妙になってくる。

 辞書で調べても、僕のこの気持ちは載っていない。きっと、僕が探しているこの気持ちの言葉が、僕には思いつかないだけなんだろうけど。






 僕の心は、なにか、足りないのです。なにか、が。

















 毎日が、実にツマラン。
 路上歩けば、人間とは思えないような格好をしている男に女。そんなに自分を偽るのが好きですか?
 そんなこといえる立場ではないが、俺は常に思っている。


 どうして、俺は生まれているのだろう。
 どうして、俺は歩いているのだろう。
 どうして、どうして、どうして…俺の頭の中には疑問形が積もり積もっている。いくら考えても、崩れることは何もない。


   考えているうちに、この世の中がどれだけくだらないかということがわかった。
 そのくだらない世界を裸眼で見たくないため、めがねをかけた。もちろん、度なんて入っていない。くだらない世界を少しでも見つめないですむように。
 帽子を深くかぶった。制服でも、なんでも、深くかぶって誰にも俺を見せないようにした。
 寒いときにはマフラーを巻いた。口元までをしっかりと隠して、くだらない世の中の臭いも、くだらない他人との他愛もない会話を減らすために。




 くだらない、くだらない。くだらない世の中だ。


 






 なんだか、俺の心すらくだらないものに感じてきた。
 そのくだらないものを覆い隠すなにかはないのだろうか。























 ナカジは最近はじめたギターケースを背中へと背負って帰り道を帰宅する。最近ではギターを弾きに行くところにも靴を履くのは面倒だからと下駄になってしまった自分がいる。
 最近の人間は他人にあまり興味を持たないためか、誰も指摘はしなかった。
 別にいい、そっちのほうがありがたいとナカジは思う。

   からころ、からころ。下駄が音を立てる。聞きなれてしまった音だ。

 そして、ナカジは足を止めた。目の前に図書館があったからだ。別によるつもりはなかったナカジだが、時間があったので中に入る。

 人はいなかった。
 始めてはいる図書館なのに、何故かどこかで見たときがあるような感覚に追い込まれる。ナカジは首を振って我を取り戻し、一番端の席にギターを置いた。

 ぼんやりと本を見つめる。

   どうやら神話ばっかりのようだ。
 もう少し現実的な話はないのかとナカジはおもうが、たまにはこんなにもあっていいのかもしれない。

 適当な本を手にとって座って読み始めた。

「あ、こんにちは」
「!?」
 ばっと後ろを向いたら、長身の男…しかもありえないぐらいにさわやかな笑みを浮かべている男だ。ウェーブのきいた黒髪に、カラコンでも入れているのか青と金のオッドアイ。名前の書かれたプレートには『アルフォンス・ミシェル』と英語で書かれている。
 ミシェルはにっこりと笑った。
「珍しいですね、この図書館には余り人が来ないのですが…」
「…そうか」
「久しぶりの利用者さんですよ、貴方。お名前教えてもらってもいいですか?」
「…ナカジ」
「ナカジ…さんですか。僕の名前はここにも書いてあるけど、アルフォンス・ミシェルっていいます」
 ミシェルは自分の細い指でプレート指して言えば、ナカジは無表情のままその行動を見ていた。



 くだらない世の中の人間としては、綺麗なやつだ。



「あなたはなにかを求めてこちらに来たんですか?」
「は?」
 眉間に皺を寄せて、ナカジはミシェルの言葉に疑問をよせた。
 今の発言はどうもなにかを求めているものじゃないときてはいけないような発言だ。


 別に暇だったから寄ったナカジには理解不能な発言だった。
 ミシェルは続けた。




「ここには物語しかおいていません。ここになにかを求めに来た人たちが、ここにある本を読んで、なにかを見つけるのをお手伝いする図書館です。とはいっても、ここにある本全部を読んでも、僕はいまだに『何か』が見つかっていませんが」
 はははっと乾いた笑いをミシェルは苦笑して見せた。苦笑にも、照れ笑いにも見えるその笑いはきれいだった。女にも見える男だ。
「アンタも見つかってないのに、見つかるっていうのかよ」
「さぁ、僕にもわかりません。それは本人しだいですから」
「矛盾しているな、この図書館」
「矛盾の中に答えがあったりしちゃうものですよ」
 くすくすと楽しそうにミシェルが笑う。一方のナカジはなんだか操られているようでなんだか気に食わなかった。
 だから、ナカジは立ち上がってギターケースをかついで図書館を出ようとした。

 きれいなミシェルが笑った。




「帰りますか?」
「ああ」
「なにか、見つかりましたか?」
「…いや」
「僕はなんだか、見つかったような気がしますよ」
「無かったくせにか?」
「ええ。あなたを見たら…なんだか…見つけたような気がしました」




 その言葉を最後に、ナカジは扉を閉めた。























 僕に足りない、なにか。本すら教えてくれない、なにか。
 もう少しで、見つけられるような気がします。


 俺に足りない、なにか。くだらない世の中じゃ見られない、なにか。
 あの図書館の全ての本を読み尽くせば、見つけられるのだろうか。


 ナカジさんと話をすれば、ナカジさんと交流すれば、見つかるのかもしれない。
 ミシェルの図書館に行けば、俺に足りない、なにか、が見つかるかもしれない。

 あなたが来るのを待っていましょう。
 あの図書館にまた行こう。















 二人に足りないもの、互いを思いあう気持ち、他人とかかわる交流。
 すなわち































 愛情